2009年02月02日
ザ・フォール/落下の王国〜映画とCMの違い〜

CMディレクター出身のターセムという監督が構想26年、撮影に4年を費やしたという作品だ。
1915年、映画のスタントマンをする主人公ロイは、落馬事故で両足を骨折し入院する。その病院で、同じく木から落ちて左腕を骨折した少女・アレクサンドリアと出会う。
職を失い、恋人も奪われたロイは自暴自棄になり自殺を考える。
そしてベッドに寝たきりの彼は、少女を手なずけ、自殺の為の薬を取って来させようと企て、彼女に架空の物語を話して聞かせ、次第に親しくなっていく。その物語は、5人の勇者が権力者に復讐する為の旅に出る、壮大なファンタジーだった。
物語に引き込まれるアレクサンドリア。
次々と倒されていく勇者達。
物語の主人公にも現実のロイと同じ最後の時が迫ろうとしていた。
その時、主人公に感情移入したアレクサンドリアは。。。
兎に角、宣伝文句通り、「色彩の鮮やかさ、映像美の美しさ」に息をのむ。
世界24カ国以上、13カ所の世界遺産でロケーションしたと言う映像の美しさは圧巻だ。
それに加えて、日本人デザイナー、石岡瑛子の衣装デザインが素晴らしい。
役者より衣装が主役といってもいいほどの素晴らしさだ。
CMディレクターらしい1カット1カット、グラフィカルなアートを観るようなこだわりの映像。
偶然だが「パコと魔法の絵本」にちょっと設定が似ている。
しかも監督はどちらもCMディレクター出身。
自分はずっとCM業界で、そのたった15秒にこだわった丹念な映像作りの現場を体験して来ながら、この密度で映画を作ったらどんなスゴい映画が出来るだろうと思って来た。
その思いを現実にした監督の筆頭が、リドリースコット監督だった。
そして、この作品のターセム監督や、日本の中島哲也監督も、それを実現した監督だろう。
が、しかし、映画とCMには決定的な違いがある。
「長編小説」と「俳句」ほどの違いだろう。
撮影の手順、編集、音楽など基本的な作業は同じだが、最も大きな違いは「脚本」の存在だ。
どんなに素晴らしい映像を見せられようとも、脚本がつまらなければ、それはつまらない映画になってしまう。
そうやって失敗した異業種監督もまた少なくない。
この作品も映像美は絶賛に値するが、導入以後のストリー展開の単調さが欠点と言わざるを得ない。導入部とエンディングは悪くないだけに、途中にもう少し二転三転する起伏を付けて欲しかったと思う。
その点が残念な作品だった。