2009年02月03日

BOBBY〜アメリカの光と影〜

BOBBY〜アメリカの光と影〜

「BOBBY 」とは、ロバートFケネディの愛称。

1968年、ロサンゼルスのアンバサダー・ホテルで暗殺された、ロバート・F・ケネディ上院議員。次期大統領として国民の希望の星だったボビィ。この映画は、暗殺当日、ホテルに居合わせた22名の人間模様を描いた作品である。

退職した老ドアマン、不倫している支配人とその美容師の妻、ベトナム行きから逃れるために結婚式を挙げるカップル、ドジャースの歴史的試合のチケットを手に入れたメキシコ人ウェイター、LSDでトリップするボランティアスタッフの若者たち、アル中の落ちぶれた歌手、22人の様々な人生が交錯し、それぞれの喜びや苦悩が浮かび上る。それらの登場人物を、アンソニーホプキンス、ハリーベラフォンテ、シャロンストーン、デミムーア、マーティンシーン、ヘレンハント、イライジャウッドといった超豪華な顔ぶれが演じる。

いわゆる「グランドホテル形式」の作品だが、実話が元になっているだけに、クライマックスの「その瞬間」に向かって緊張感のある展開を見せる。
彼らの思いがアメリカの希望の星、ロバートケネディの登場によって最高潮に達した時、あってはならない悲劇が起きる。
当時の映像も交えた衝撃のクライマックスにより、この作品を単なる市井の人々の人間ドラマで終わらせないメッセージ性の強い作品にまで昇華させている。

最も心に強く残るのは、クライマックスの銃撃後の混乱の映像に被せられるロバート本人の当時の肉声スピーチだ。死の二ヶ月前の「暴力終結」を提唱したスピーチ。その全文を書き出してみた。

アメリカでの心ない暴力について。
暴力は国の名誉を汚し、人々の命を奪います。
それは人種に関係ありません。
暴力の犠牲者は黒人、白人、富者、貧者、若者、老人、有名、無名。
何よりもまず彼らは人間だと言うこと。
誰かに愛され必要とされた人間なのです。
誰であろうと、どこで暮らそうと、どんな職業であろうと、犠牲者になり得ます。無分別な残虐行為に苦しむのです。
それなのに今も尚、暴力は私たちのこの国で続いています。なぜでしょう?
暴力は何を成し遂げたでしょう?何を創り出したでしょう?
アメリカ人の命が別のアメリカ人により不必要に奪われる。
それが法の名の下であろうと、法に背くものであろうと、
一人または集団によって、冷酷に計算して、または激情に駆られて、
暴力的攻撃によって、または応酬によって、
一人の人間が苦労して自分や子どものために織り上げた生活や人生が暴力で引き裂かれる。
暴力はすなわち国家の品位を貶めることです。
それなのに私たちは暴力の増長を容認する。
暴力は私たちの人間性や文明社会を無視しているのに、私たちは力を誇る者や力を行使する者を安易に賛美する。
自分の人生を築くためなら他者の夢さえ打ち砕く者を私たちはあまりにも安易に許してしまう。
でもこれだけは確かです。
暴力は暴力を生み、抑圧は報復を生みます。
社会全体を浄化することによってしか、私たちの心から病巣を取り除けません。
あなたが誰かに人を憎み恐れろと教えたり、その肌の色や信仰や考え方や行動によって劣っていると教えたり、あなたと異なる者があなたの自由を侵害し、仕事を奪い、家族を脅かすと教えれば、あなたもまた他者に対して同胞ではなく敵として映るのです。
協調ではなく力によって征服し、従属させ支配すべき相手として、やがて私たちは同胞をよそ者としてみるようになる。
同じ街にいながら共同体を分かち合わぬ者。
同じ場所に暮らしながら同じ目標を持たぬ者として、共通するものは恐れとお互いから遠ざかりたいという願望。
考え方の違いを武力で解決しようという衝動だけ。
地上での私たちの人生はあまりに短く、なすべき仕事はあまりに多いのです。
これ以上暴力を私たちの国ではびこらせないために。
暴力は政策や決議では追放出来ません。
私たちが一瞬でも思い出すことが大切なのです。
共に暮らす人々は皆同胞であることを。
彼らも私たちと同じように短い人生を生き、与えられた命を最期まで生き抜きたいと願っているのです。
目的を持ち、幸せに満ち足りた達成感のある人生を送ろうと。
共通の運命を生きる絆は必ずや、共通の目的を持つ絆は必ずや、私たちに何かを教えてくれるはずです。必ずや私たちは学ぶでしょう。
周りの人々を仲間として見るようになるはずです。
そして努力し始めるでしょう。
お互いの敵意をなくし。お互いの心の中で再び同胞となるために。

このスピーチの二ヶ月後に本人が心ない暴力の前に希望に満ちた人生を断ち切られてしまうとは。。。
歴史に「if」はない。と言うが、もしJFKが、弟のロバートが凶弾に倒れていなかったら、アメリカという国は変わっていただろうか?
映画の中のスピーチのシーンで、「思いやりのある国」を目指すと言っていたのがとても印象に残った。

今、この映画が作られ、このスピーチが引用された「意味」を考えなければいけないと思う。



同じカテゴリー(映画)の記事画像
少年メリケンサック〜時代がパンクを求めてる〜
日本映画のあるべき姿/祝おくりびと外国語映画賞受賞
チェンジリング〜人間そのものを描くということ〜
12人の怒れる男〜ロシアの今を浮き彫りにする〜
20世紀少年 第2章/最後の希望〜中継ぎの宿命〜
その土曜日、7時58分〜銃容認社会の怖さ〜
同じカテゴリー(映画)の記事
 少年メリケンサック〜時代がパンクを求めてる〜 (2009-03-03 11:33)
 日本映画のあるべき姿/祝おくりびと外国語映画賞受賞 (2009-02-23 23:40)
 チェンジリング〜人間そのものを描くということ〜 (2009-02-18 09:56)
 12人の怒れる男〜ロシアの今を浮き彫りにする〜 (2009-02-15 22:28)
 20世紀少年 第2章/最後の希望〜中継ぎの宿命〜 (2009-02-09 17:40)
 その土曜日、7時58分〜銃容認社会の怖さ〜 (2009-02-06 10:39)

Posted by Toshizo at 09:29│Comments(0)映画
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

QRコード
QRCODE
インフォメーション
大分県の地域ブログ情報サイト「じゃんぐる公園」

ID
PASS

大分ケーブルサービス
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 1人
プロフィール
Toshizo
Toshizo
仕事も趣味も映像ドップリの映像ジャンキー
辛口コメントで映画を斬ります